配達あかずきん

大崎梢の同名小説を久世番子がマンガ化。
「パンダは囁く」、「示野にて 君が袖振る」、「配達赤ずきん」、「六冊目のメッセージ」、「ディスプレイ・リプレイ」の五作品を収録。
書店を舞台にした、いわゆる「日常の謎」系の連作短編集なのだが、もともとの原作も短編集(なのだろう。未読だけど)の上、マンガ用にリライトされているからか、ひどくテンポが早い。
読んでいて、すぐに謎が提示され、あれこれの仮説、正解と事件の解決、解説……と、とても忙しない印象を受けたわけだが……これは、最近の、長期連載を前提にしたマンガばかり読んできた弊害かなぁ……とも、思う。一つ一つの作品にしっかりとした手応えと密度がある。
それとあれ、当たり前の話しといえばそれまでだが、この本、いわゆる「キャラクター中心」ではなくて、「事件中心」で話しが展開しているわけで、「不自然にキャラをたてる」工程をすっ飛ばしているのだな。最低限の紹介だけして、あとはどんどん話しを進めている。
原作準拠、かつ、決められた枚数に収めなければならない……という制約が大きいのだろうけど、これくらい贅肉をそぎ落とした感じの方が、「物語本意」で楽しむ分には、いいのかも知れない。
話しとか謎解きとかも、舞台や登場人物が限定されているわりには、いろいろなパターンを用意して飽きさせない作りになっている。っと、これは、おそらく原作の方の手柄なんだろうけど。
連作短編としてもミステリとしてもそれなりにクオリティが高く、読む前に漠然と想像していたよりは、よっぽど面白い一冊だった。