モンゴル

公式:
http://www.mongol-movie.jp/
観に行こう、観に行こうと思いつつ、なんとなく日延べしていたら上映館が激減していた件。
まあ、日本ではそんなに客が入るタイプの映画でもないしな。主演、浅野忠信というだけでは、集客にはちょっいと弱い。
これは、それ、「歴史物」というよりは、あれだ。「チンギス・ハーン誕生秘話」。テムジンがハーンになるまでの物語、ほとんど記録が残っていない、ハーンの前半生、テムジン時代の物語だ。
だから、史実に忠実に、というよりは、記録されている細々とした記述を元に、大胆な想像力で脚色している。というより、でっち上げている、といった方が正しい……のか? なにしろ、記録がほとんど残っていないのだから、「想像=創造」するより他ない。
例によって、いろいろ合戦とかのスペクタクルなシーンはあるわけですが、基本的な軸は、妻・ボルテとテムジンの関係性になっている。
何しろ、若くして父を亡くしたテムジンには、後ろ盾がない。すなわち、力がない。
新婚早々、略奪されるのを皮切りに、ボルテさんはしょっちゅう、数年単位で誰かさんのモノになってはテムジンが取り返しに行く……ということが、何度か繰り返される。その間、ボルテさんは略奪者の子どもを妊娠して育てているわけだが、再会したテムジンは、すべて「おれの子」にしてしまう。
当時の風俗を考慮すると、充分にあり得る事態ではあるんだけど……この映画でのボルテとテムジンの関係は、現代的な恋愛とか相思相愛関係……というよりは、「お互いのパートナーである」ということをアイデンティティの拠り所にして、ひたすら流動的な事態を乗り切ろうとする……むしろ、相互依存関係に近いのではないか?
若いテムジンは弱く、何度も潰されかかっては捕虜や奴隷に身を落としては、再起して、少しづつ力をつけていく。最初から野心を持って成り上がろうとしていたわけではなく、その繰り返しの中で、確固たる「掟」を自身の中に構築し、伝統的なモンゴルの「掟」を上書きする……という目的のために、周辺氏族を平定しようとする。
おそらく、このあたりは史実とは異なるんじゃないか……と、やはり思ってしまうのだが、この映画の中では、それなりに筋が通っている描かれ方になっていた。
前半にあまり規模の大きくない小競り合い、それと、終盤の大規模な合戦シーン以外、スペクタクルなシーンは存外に少なく、どちらかというと「史劇」を期待して観に行ったこちらとしては、肩すかしをくらった印象だが、映画としてはそんなに悪くない。
ただ、美術はとか血吹雪とかは画像を加工しすぎ、CGで綺麗にしすぎ、作りすぎ……という印象も、同時に感じたけど。
あんだけ大規模なロケーションを敢行し、大規模なオープンセットを作ったのなら、もっと素材で勝負しても良かったのに……ちょっと、いろいろ手を入れすぎたかなぁ。
絵的には。