クローバーフィールド HAKAISHA

予告編を劇場で見たときからうすうすそうじゃないかと思っていたのだが……やっぱり新手の怪獣映画だった。
ただ、「怪獣」というモノを全面に押し出さず、「訳もわからぬまま逃げまどう一般人」の視点に拘って、ひたすらパニック/スリラーを全面に押し出したセンスが秀逸。「目に見えるもの」よりも、「目に見えないもの」ないしは「理解を超えた存在」の方が、絶対に怖い。しかもその「理解を超えた存在」は、作中では終始一貫「正体不明の存在」として扱われる。
怪獣映画ではあるけど、主役は怪獣ではない。不意に怪獣の脅威にさらされて、パニくっておびえ逃げまどう、ごく普通の一般人たちだ。しかも、ハリウッドの娯楽映画にしては珍しく、ハッピーエンドではない。主要登場人物は残らず死ぬし、最終的に怪獣が退治されたのかどうかも曖昧なまま。
日本にいって副社長になる若者の送別パーティーを撮影するgdgdな序盤から、パーティーの最中にいきなり、NYのど真ん中に怪獣が現れて突如緊迫する。画面が突如切れたり、過去に重ね撮りした映像が不意に現れたりする、「ハンディカムで撮影した映像」という設定がもたらす演出も、完全に成功しているよな。
それに、一見無造作に撮影されている映像も、シーン構成などは完全に計算され、コントロールされている。
怪獣が登場するまでの序盤こそ若干、退屈していたものの、それ以降はダレ場がまったくない、緊迫した雰囲気。
あるいは、「こんなモノ、何十年も前に作られていても不思議ではなかった」という言い方も、出来る。何しろ、怪獣映画は、主に日本で、何十本も作られているからだ。一本くらいは、怪獣をこのように扱った映画があっても良かった。
ああ……なんで、こういう怪獣映画を、日本で撮れなかったのだろうか? あるいは、USA版の「GODZILLA」は、こういう映画になり得なかったか?
見終わった後、いろいろと考えさせられた映画だった。