3月のライオン 1

3月のライオン (1) (ヤングアニマルコミックス)

3月のライオン (1) (ヤングアニマルコミックス)

雑誌掲載時からパラパラと眺めてはいたのだけど、一冊にまとまったのを読むと……想像以上に、固い。その、主人公の桐山零くんが。
この1巻の時点では、
「幼い頃、両親や妹と死別。その後、プロ棋士・幸田の家庭に引き取られ、そこで自分の居場所を作るために将棋の腕を上げ、中学生でプロ棋士に。しかし、養家の人びととの折り合いも悪く、中学卒業と同時に独立」
というプロフィールが提示されている。
第一話は、その、引き取られていた先のプロ棋士のおじさんを、公式戦で負かしちゃうエピソードからはじまる。

──一手一手、 まるで
素手で殴っているような
感触がした──

桐山零くんが、「育ての親」を負かした試合を思い返しすシーンでそんなモノローグがあるんだけど、この作品をやんわりと包んでいるのは、ほとんど暴力に近い抑圧的な空気なんだよな。読んでいて、結構息苦しい。
そもそも、この零くんが将棋の腕を上げたのだって、養父のプロ棋士に認められようと思ったから……なのだけど、実際に実力をつけていくと、今度は、幸田の実子である「4つ上の姉、香子」と「同じ年齢の弟、歩」がぐれる。主人公につらくあたるようになる。
零くんにしてみれば、自分の居場所を確保しようと必死に勉強しただけなんだろうけど、その結果、幸田の実子二人は自分の限界を早々に悟ってしまったわけで……。悪意がなくとも、零くんは「プレッシャーの元」でしかないわな……。
特に「姉、香子」は、かなり直接的感情的に零くんに対応していたような描き方がなされていて(ひょうっとしたら、性的な虐待も含む? p.128の回想カットなんか、そういう解釈も可能だよなぁ。あの構図)……その先、今の時点で明かされていない過去の経緯がほどけてきて、詳しい事情が明るみになってくると、この作品の見方も、いろいろと変わってくるのではないか?
主な舞台となっているの六月町とか三月町の風景は、江東区周辺の川辺に酷似している。メジャーな地名でいうと、「月島周辺」のイメージ……つまり、典型的な下町の風景、なんだけど、深川・清澄近辺をいろいろつぎはぎしている感じだな、実際には……。
それなりに、歩き回って取材もしていると思う。
あと、これは余談だけど、川本あかりさんみたいな若い女性、絶対、実在ないよな。「よつばと!」のとーちゃんのパンツ柄の服を着ている件ではなく、あれだけ包容力と生活力があって、銀座のお店でも働いている……って、どんだけ完璧超人やねん。