"文学少女"と月花を抱く水妖

“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫)

“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫)

おし。あいかわらず、綺麗な出来。
現在進行形の「夏休み」の出来事、五十年前、八十年前の「事件」、時折挿入される、「未来から振り返った」風の断章、朝貴の血族の物語……見かけよりずっと複雑な構成をしているのに、そうと感じさせない読みやすさを維持しているのは流石。一応、フェアな謎解きにもなっているしな。
しかし、物語の結末をかなり具体的に想像させる手法を使っていても、番外編とかで「いまだ語られていない過去」の挿話を際限なく続けていくのは、シリーズ物として見た場合、下手をすれば冗長な延長になる可能性もある。
せっかくここまでいい線でいっているのだから、引き際を誤らないといいな、このシリーズ……。