円環少女 6 太陽がくだけるとき

わひゃひゃ。
わたし好みの絶望的な展開の連続でにやにや笑いが止まらなかった一冊。
そうです。
理想主義者の主人公は、過酷な現実の前にこれでもかとばかりに痛めつけられなければなりません。
ある意味、とっても王道な展開ですな。逆に言うと、これくらい、「救いのなさ」を強調しなければ、「リアル」に思えないという側面もある。
架空の設定を「いかにも、ありそうに」現実の世界とオーバーラップさせたエンターテイメントとして見た場合、この東京地下戦争篇は、設定の緻密さとリアリティの階梯において、特に「ライトノベル」というカテゴリに範囲を限定せずとも、類似作品群の中でも頭一つ抜き出ていると思う。
背景の世界にも、そして登場人物の一人一人にも、しっかりとしたバックグランウンドがあり、思惑があり、「正義」があり……だからこそ、「必然的に」ぶつかり合う。避けられないからこそ、生じる緊迫感。
しかし……「仮面ライダーの正義」を「月光仮面の正義」で相対化し、無効化する……という展開は……いや、もちろん、一種の欺瞞ではあんだろうけど、現代史や血肉を持った中年男の肉声として表現されると、それなりの力は持つもんだな。
この辺は、完全に設定が成功した例だろう。この東京地下戦争篇は、実は主人公や魔法使いたちではなく、舞台裏でちらほら苦悩している「こっち側の世界の、普通の人々」の、じみーな苦労とか葛藤とかが、細やかに描写され、クローズアップされたエピソードでもあった。
ラノベの主たる読者層である、若年の方々にはこの辺の渋さは、あまりピンと来ないのかも知れないけど。