初音ミク界隈に見る既視感のある光景

http://d.hatena.ne.jp/essa/20071021/p1

(前略)
何だか見たことがある光景だと思ってしばらく考えてようやく思い出したのは、オープンソース勃興期にITの内側からそれを見ていた自分の視点だった。
(中略)
「あり得ない」としか思えなかったけど、実際、インストールしてみると、ちゃんと動くんですね。しかも、ものすごい勢いで進化していく。

「既に俺たちがさんざんやってきたことを、素人向けに化粧直ししただけのものにすぎなくて、よく知っている俺たちから見るとそのためにレベルダウンした所がたくさんあってそこが気になってしょうがないのだが、そういう玄人筋の苦闘の歴史を知らない連中が大挙して押しかけてきて、俺たちが大事に守り育ててきたものを蹂躙しそうな凄い勢いで、基本的には微苦笑してればいいと思うんだけど、それが一時的なお祭り騒ぎに終わらないとしたら、これは大変なことになるぞ、困った困った」

OSの開発はやったことないけど、制御や通信と言って普通の事務処理よりちょっとは難しいことをやっていた私は、そう思った。

ITっていうのは、お客様から出された仕様に従って確実にソフトウエアを作るってことだし、ソフトウエアだけではなくて、問題が起きた時に責任を持って対応できる組織があって初めて意味がある。だから、自分たちの為にソフトを作って、出来上がったら「ネットに置いておくので勝手にダウンロードして使ってください」というオープンソースとは、別のものだ。

そう思ったけど、あの勢いを見てたら「違う世界のことだから関係ないと言ってられなくて、こっちも蹂躙されるなあ」と思ってたら、案の定、きっちり蹂躙されましたよ。

旅客機と同じくらい複雑で開発の手間がかかるオペレーティングシステムというものを、あいつら本当に開発しやがって、しかも本当にタダでばらまいている。OSの回りには、それはそれはたくさんの人の食い扶持を支えるたくさんの仕事があったけど、全部根本からぶち壊された。
(中略)
ただ、本質は変わってない。

プログラムが好きでこの仕事をやっている人が仕事を失なうことはないし、品質や信頼性にこだわって、本物のプロの仕事をしてきた人は、そんなに困ってないと思う。

昔ながらのIT技術者っていうのは、頭が固く情報にうとい人が意外に多くて、今だにフリーウェアとオープンソースの違いもわからない人が私の回りにもたくさんいるのだけど、「オープンソースっていうのは、OSやミドルに問題があっても、いちいちベンダーの開発部隊に電話する必要がなくて、自分たちがそのまま中まで調べられるんですよ」と言えば、いっぺんで本質を理解する。パソコン以前に育って修羅場を経験しているベテランほど、このポイントの理解は早い。

本質が無くなることはない。でも、エコシステムは根本から変わってしまう。たぶん、「初音ミク」が「音楽」業界に与える影響も、同じようなことになると思う。

ネットが可能にした素人集団の暴走は、他にもたくさんの職業に対して、その職業の本質を洗い出す働きをするだろう。

初音ミクの周辺を「オープンソース・ムーブメントをリアルタイムで眺めてきたIT業界の人」の視点から見た、いいエントリだと思う。
その辺をみていてわたしがもやもやっと感じて、それでいて言語化できないでいたニュアンスを、すっと分析して貰った感じ。
読んでいて、非常にすっきりとした。