プラネタリウムのふたご
- 作者: いしいしんじ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/10/14
- メディア: 文庫
- 購入: 4人 クリック: 18回
- この商品を含むブログ (83件) を見る
「ブランコ乗り」、「麦ふみクーツェ」……など、少なくとも、わたしが読んできた何冊かに関していえば、表面的な意匠に反して、読後感はかなりビターだ。どの作品しても、親兄弟恋人、どんなに近しい間柄でも、理解しきれない領分が存在する、というディスコミュニケーションのテーゼが作品の底にわだかまっている。表面的には童話的な意匠を採用しながらも、だから、いしいしんじの作品は、読み終えた後、「……子供に読ませるのにはもったいないな……」と思ってしまう。第一、どの作品も、あまり「ハッピーエンド」を指向していない。
例えばこの「ふたご」に関していえば、終盤で登場する「まっくろでおおきいもの」の存在感は、圧倒的だ。こうした凶兆が、打破するもの、排除されるものではなく、「共存すべきもの」として描かれる世界観は、かなり上等なのではないだろうか?