スクールアタック・シンドローム

スクールアタック・シンドローム (新潮文庫)

スクールアタック・シンドローム (新潮文庫)

新潮文庫版。表題作、「スクールアタック・シンドローム」、「我が家のトトロ」、「ソマリア・サッチ・ア・スイートハート」の三編収録。比較的薄い一冊だが、中身はどろりと濃厚。
収録作のうち、表題作、「スクールアタック・シンドローム」は青山景によるマンガ化作品を読んでいたので、内容は知ってはいたけど……小説とマンガとでは、やはり表現方法が全然異なるわけで、おなじ話しでも受ける印象が全然異なる。
 ↓青山景による舞城作品のマンガ化作品集「ピコーン!」

ピコーン! (IKKI COMICS)

ピコーン! (IKKI COMICS)

マンガ版は「父と子」の関係に焦点を当てている形だが(表現方法の違い、以外に、ページ数の制約なども関係していると予測する)、小説は酒浸りのダウナーなおやじの一人称と、友人や元妻、警官などのおやじへの対応が強い印象を与える。
「我が家のトトロ」は、収録作の中で一番、軽い印象を受けた。作中であまり過激な事件が起こらないから、というのはあるかだろうが、家族とか夫婦間の愛情とか、そういった一般に受け入れられやすいテーマを臆面もなく、正面切って描いているからだろう。この作品に限らず、また、過激な暴力描写が頻繁に登場するのにも関わらず、舞城王太郎は、ひどく保守的な愛情を、正面から称揚することが少なくない。
書き下ろしの「ソマリア・サッチ・ア・スイートハート」は、読んでいて一番、「キた」。
ヒロインのソマリアちゃんの扱いが、素敵に非道すぎる。同級生に首をへし折られようが、実の叔父に赤ん坊の頃からえんえん変態近親双姦を強要されようが、平然と生き返ってしまうソマリアちゃん。かなりひどい目にあっても、生き返って自分を殺した女の子と友達になったり男子生徒を巡って不戦協定を結んだりする普通さが素敵すぎる。そんでもって、その後も、何度も叔父に殺されて生き返って、ごく普通の女の子として成長し続ける展開が、もう神がかっている。
この内容なら、どこの言語に翻訳しても、それなりに通用するのではないだろうか?
舞城王太郎って、過度に暴力的だったり突拍子もない出来事が作中でポンポン起こったりする割には、テーマ的には割合普遍的だよな、とか思った。