天竺熱風録

天竺熱風録 (ノン・ノベル)

天竺熱風録 (ノン・ノベル)

途中まで読んで中断していたものをようやく読破。いや、忙しくって、読書に当てる時間が減っていただけです。
内容は、実にそつがない歴史を題材にしたエンターテイメント。いい意味でも悪い意味でも。
と、いうのは、この作品、物事がなんとも都合良く進みすぎるのだった。敵役のアルジュナ王夫妻の造形とか、これでもかっていうくらい、典型的な暗君でねぇ…
…。いや、そもそも、主人公の王玄策自体が、唐代に三回だか四回だか天竺を往復した官僚、というさりげなく非現実的な経歴の持ち主だから、それくらいで釣り合いがとれるのか。
一口に「歴史物」といっても、様々なタイプの創作物があり、虚構と史実の割合もその種類により自ずから異なってくるわけであるのだが、この作品の場合、そもそも、記録に残っている部分自体が極端に少ない。要約すればわずか数行の記述にこれだけの骨肉を与えたのは、やはり賞賛されるべき。