愚か者ほど出世する

愚か者ほど出世する (中公文庫)

愚か者ほど出世する (中公文庫)

タイトルから連想するような軽々しい内容ではなくて、意外にシリアスな考察を含んだ内容。
著者は、イタリア人のジャーナリスト。ある時、コンラート・ローレンツと対談する機会に恵まれ、ふとした弾みで「我々人類は、年々愚かになっていっているのではないか?」という思いつきを口にしてしまう。で、ローレンツの方はというと、それに明確な反論が出来ず、むしろ、その思いつきを面白がって、「十分に検討に値する仮説だ」といい、しばらく著者とローレンツの淡い交流が続く。
その後、老齢のローレンツは逝去。代わりに、ローレンツの旧友である老いたオーストリア人教授と著者は、その「仮説」を巡って、長々と込み入った論考を含んだ「文通」をすることになる……というのが、だいたいの内容。
「組織にとっては、突出した知性はむしろ邪魔」
「卓越した存在ほど周囲から邪険にされ、孤立する」
「利口なものは周囲の馬鹿さ加減に自分を合わせる」
などなど、反論が難しい仮説がぽんぽん出てくる。ネアンデルタール人チンパンジーなどと現生人類を比較する生物学的な考察も含んでいて、時折シニカルな言い回しが鼻につくことはあるものの、内容的には、極めてまともだった。