巨船ベラス・レトラス

巨船ベラス・レトラス

巨船ベラス・レトラス

これは極めて正しい筒井康隆ですね。ただ、比較するべきは、コピーに私用されている「大いなる助走」よりも「文学部唯野教授」の方だと思うけどな。あるいは、「虚人たち」あたり。つまりはその辺の流れででるべくして出た作品、というか。三分の一くらい読んでだいたいの方向性が予測できたんで、あとは具体的に「……どういう手でくるのかなぁ……」と思いつつ、読んだ。
満腹亭(アナーキーなレストラン)へようこそ途中、著者自身が出てきて無断出版短編集「満腹亭にようこそ」についてのお粗末な顛末が延々と語られる箇所があるのだが、こういう下品になりがちな記述も、そことはなしに風格があるっていうのは凄いなあ。この内容を信じる限り、北宋社には内容証明を送って出方をみただけで、著作権侵害の訴えは起こしていないようだし……。しかし、「著者に出版許可も貰っていなければ、印税も払っていない」で本、出せるんだなぁ……。みつかったら、ごっそり違約金搾り取られるんだろうけど。