未完の明治維新

未完の明治維新 (ちくま新書)

未完の明治維新 (ちくま新書)

いやぁ。濃い、濃い。
新書一冊で、ここまで克明に幕末から明治初期の「革命」の趨勢を描いてみせれば、そりゃあもう読み甲斐があるというもんで……。
あんまり詳細に分けいって説明してもあまり意味がないと思うので、ごく、ざっくりと印象に残った部分を述べると、
「富国」と「強兵」は相反する。
「富国」、「強兵」、「憲法制定」、「議会制」など、少なくとも明治初期においては、すべて、「士族の為のもの」。当時の為政者の視野には、士族以外はあまり入っていない。板垣等の「民権運動」も、士族以外は想定していない。
地租改正で税率固定制を強いた直後に南北戦争勃発。その直後、米価高騰。政府は戦費負担と実質税収減のダブルパンチ。
西郷の退場で「強兵」が、財政難で「富国」の政策が、実質、不可能になる。
米価高騰と税率固定で、農民の富裕化が起こる。これにより、富裕農民層の政治参加意識が向上。
明治後半に活躍したのは、「士族」ではなく、専門教育を受けたテクノクラート。実務的だが、黎明期の「革命性」は受け継いでいない。