ヘル
テイストとしては「夢の木坂分岐点」に近いな。いつもの筒井テイスト。後の方にいくにしたがって、五七五調になっていき、装飾性が強くなっていく文章とか、筒井調意外のなにものでもない。
時系列が前後したりしている割に読みやすいのは、構成が練れているからか。
夢の世界と死後の世界、歌舞伎の奈落と世界中の地下が繋がっているという発想は面白いけど、この「ヘル」って世界はようするに何でもありのヴァーチャルワールドで、死んだ人たちが妙に達観しちゃっている分、呼んでいる側は面白味がないか。
戦後とか日本の過去の時代の風俗は流石の描写だし、「何でもあり」のヘルの住人が、長生きして痴呆状態になったかつての友人を訪れるシートかはぐっとくる。