血だるま剣法・おのれらに告ぐ

血だるま剣法・おのれらに告ぐ
平田 弘史著
青林工芸舎 (2004.9)
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1962年に上梓され、その後、部落解放同盟の抗議を受け、廃棄・回収・絶版処分を受けた「血だるま剣法」と、1968年に、まったく同じ作者によりリメイクされた「おのれらに告ぐ」を収録。
両作品の間に、呉智英による、当時の詳しい事情を考察した、かなり長文の「解説」あり。
書かれた時代、ということもあるだろうけど、「血だるま剣法」の方が描線が荒々しく、絵も大雑把で細かい所まで書き込んでない。単純に「絵」としてみると、やはり後年に描かれた「おのれら」の方が洗練されているな、とは思うんだけど……「作品」としてみてみると、「血だるま」の方が、全然迫力がある。
やはり抗議を受けて、なのか「おのれら」の方は、「○○」や「△△」を「流刑人」に変更したり、後半、主人公の猪子が「だるま」にならなかったり、といった「よりソフトな」方向に改編されているのも、微妙に印象が異なる一因であろう。
が、「今、そこにある差別への抗議」というテーマを強調しようとするあまり、ただでさえ荒々しい作品が、さらに過剰なまでの執着を持ってしまった「血だるま」の方が、エンタメとしては上だと思う。
内容が内容なんで、誰にでも勧めようとは思わないけど。
こういう「行き過ぎ感」的なエネルギーは、貴重だ。