オペレッタ狸御殿

公式: http://www.tanuki-goten.com/index.html
久しぶりに(何ヶ月ぶりだ?)劇場に観にいきました。年齢とるとどうもフットワークが重くなっていかんねえ。多少興味のある映画でも「どうせちょい待てばレンタルで」という怠惰さが頭をもたげてくる。
わたしは、清順翁の前作「ピストル・オペラ」も未だ観ていないような不勉強不面目な観客であるわけですが、これは別。なんてったって「狸御殿」だよ「狸御殿」。この歴史あるタイトルを、あの「清順」がどう料理するのか、ってぇのが、まず第一の興味だったわけだ。で、だ。
詳しい感想は後にもすこし整理して「評判記」のほうに組み入れる所存だから、ここでは、てっとりばやくいくつかのmemo書きのみを箇条書きにしておく。

1.役者さん方の「生」が見事に活きていた。
 表情や所作、それに朗々としょうされる、台詞と歌。それらすべてが「活きて」いた。この辺の呼吸は、「映画」というよりは「舞台劇」に近い気がする。(「オペレッタ」だから、それでいいのか)
2.「間」と「空」が美しかった。
 「なにも起きない時間」、「なにもない空間」がそこかしこにある。「不在」の「存在感」。
3.「プロダクション・デザイナー」の木村威夫氏のセンスとCGとの見事な融合。
 日本の映画美術を語る上ではずせない存在である木村威夫氏のセンスが見事にCGと解け合っている。これは、長年、氏の「仕事」を観ているわたしにしてみると、すっげぇ快感だったわけだ。ちょっと前までは、「予算の不足をアイデアで埋める」的な「センスの良さ」ばかりが悪い意味で目立ちがちな氏の仕事ぶりが、ここで俄然異彩を放つ。
4.「オペレッタ」にして「映画」。現在、こんなもん作れるの、清順翁だけでしょう。
 やっぱ、清順翁、「オンリー・ワン」の人だよ。と、見終わって唖然とする。正直、「完成度」という点でいえば、清順翁の過去の作品に、もっとパーペキーなのがごろごろある。
 でも、それはそれ、これはこれ。過去作品がいかにすぐれていようとも、この「狸御殿」は「狸御殿」で、他の作品とはまたひと味も二味も違った魅力を放っている。「替え」が効かない、「オンリー・ワン」の作品なのだ。


 ……この作品のついては、まだまだ語りたいことが幾らでも出てくる案配なんで、現在思考の収拾がちょいとつきかねているので、やっぱり日を改めてまた整理します。
 とりあえず、まだ封切りされたばかりの作品なんで、
「マスメディアの前情報無しには作品の鑑賞ができないタイプの観客は、観ない方がいい」
 とだけはいっておく。